金城弘美さんのユクイどき トロピカTIME♪
2021.06.24

慰霊の日の6月23日のトロピカTime。
この日はゲストをお迎えしました。
昨年まで大浜小学校の校長先生をしていました
浦崎喬(たかし)先生です。
弘美さんのCDの中にもある「6月の祈り」と、
LIVEでも歌ったことのある「てぃだの恵み」の
2曲を生歌で披露していただきました。
なんとこの2曲は浦崎先生の作詞作曲で作られたものです!
平和への願いを込め、また、さんさんと降りそそぐ太陽から日々
恵みをもらっている感謝の気持ちを込め、
お二人で歌っていただきました。
6月の祈りを歌う前に朗読をしてから歌っていただきました。
以下朗読内容全文です。

6月の祈り
ミツ子は走った。暗い夜道をお母さんの手を離さぬように南へ、南へ。
戦争が激しくなったため、ミツ子達は首里の豪を離れ、アメリカ軍に
追われながら、沖縄本島の南へと避難の最中だった。
「ミツ子、しっかり、まだ歩けるよね」
お母さんの声に励まされ、
「大丈夫よお母さん、まだ頑張れる」
南へ逃げる人々と一緒に声を殺して歩いていたとき。
ぱっと夜空が急に明るくなった。
「照明弾だ」
「次、大きな爆弾がくるぞ」
だれかが叫んだ。
どーんという音と一緒に、ミツ子はふわっと持ち上がり、
地面に落ちた。そして、お母さんとつないでいた手が離れた。
「お母さん」
「お母さんどこ」
「お母さん」
あたりはまた夜の闇になり、誰の声も聞こえない。
「お母さん、お母さん」
と呼び続けたとき、ミツ子は何かにつまずいて転んだ。
月明りもない中、何も見えないが、
「人だ」
ミツ子は思わずあとずさりした。
「まさか、お母さん」
ミツ子は四つん這いで近寄り、顔を確認しようとしたが、
暗くて見えない。
「お母さん」
と呼んでみたが、返事はない。
そっと、手をのばし、倒れている人の手を探し、握ってみた。
「お母さんの手」
「お母さん、返事をして」
お母さんからの返事はなく、もちろん二度とお母さんの手は
ミツ子の手を握り返さなかった。

ミツ子は海の近くの小さな豪にいた。
どこからか、どのようにしてここに来たのかも分からない。
ただ、膝を抱え、涙が涸れ波の音と、風の音を聞いていた。
「返して、私のお母さんを」
「返して、私の島を」
小さくつぶやく声は、どこにとどくのだろうか。

あれから七十六年。ミツ子は今年も、海が見える
この場所を訪れていた。そして、石に刻まれたお母さんの文字を
指でなぞりながら、心に誓った。
「もう二度と悲しい思いは・・・」
「もう二度と戦争はない方がいい・・・」
頬を伝う涙は、緑の芝生に落ち、見上げた青い空は、
梅雨明けした6月の沖縄の空だった。

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